変形性膝関節症の治療-サプリメントは効かない
変形性膝関節症を患う人の多くは膝に痛みを抱えており、患者さんは市販の痛み止めを用いる ことで、手術を避けたいと考える傾向があります。グルコサミンやコンドロイチンといったサプリメントが有名で、Nutrition Business Journal によると、アメリカ国民は2012年の1年間で、これらのサプリメントに81.3億ドル(日本円にして約1兆円)も費やしたとされています。
膝の痛みは、関節軟骨の破損によって引き起こされます。関節軟骨は、膝やその他の関節の末端を覆う強くて柔軟な組織で、グルコサミンとコンドロイチンにより構成されています。しかし、これらは痛みの緩和という面においては、それほど有効ではありません。一体なぜなのでしょうか。
サプリメントはうまく働かない
多くの研究で、グルコサミンやコンドロイチン硫酸は、膝関節の痛みを緩和するには有用でないと示されています。サプリメントを飲んで痛みや腫れが引いたと言う人も多いのですが、有効成分の無い「suger pill(砂糖の錠剤)」を偽薬として飲んでも同様の結果が得られます。アセトアミノフェンやイブプロフェンといった鎮痛薬の方が、上記のサプリメントよりは、よほど効果的です。
サプリメントには危険もある
グルコサミンとコンドロイチン単体ならば有害ではありませんが、他の薬物と相互作用を起こす場合があります。例えば、ワルファリン(商品名:ワーファリン 抗凝固薬という血液をさらさらにする薬)の効果を増大させ、出血リスクを高めてしまうことがあります。アメリカでは、高齢者で救急搬送の原因第3位がワーファリン関連の問題です。
これらのサプリメントはお金の無駄遣い
毎日グルコサミン/コンドロイチンのサプリメントを飲んだとすると、1年間でおよそ130ドルも支払うことになります。さらに悪いことに、ボトルのラベルに書かれていることには間違いも多々あるのです。2013年に、コンシューマーレポートが16種類の関節痛のサプリメントを調べたところ、7つのサプリメントで表記よりもコンドロイチンの含有量が少ないということが明らかになりました。
他の方法の方が効果が高い
膝関節痛を緩和させるための、より良い方法を紹介します。
・運動療法
・減量
・アセトアミノフェン(鎮痛)
・イブプロフェン(鎮痛薬)
・ナプロキセン(鎮痛薬)
これらの方法でも不十分なら、注射や手術といった治療について医師と相談しましょう。
アドバイスコラム
変形性膝関節症の痛みを緩和させるためのステップ
・体重の減量
1kg体重を減らすと、歩行時に膝にかかる圧力を4kg分も減らすことができます。
・運動
膝を強くするために、筋力トレーニング、特に太ももの前にある四頭筋を強化するためのトレーニングを行いましょう。有酸素運動をすると、体力がつき、痛みも減らすことができます。ストレッチは筋肉が固まってしまうのを防ぎます。ジムなどに行って、変形性膝関節症の人向けのエクササイズがないか聞いてみましょう。
・道具の使用
杖や歩行器を使うことで、膝の負担を減らせます。医学的に必要な場合は保険でのカバーが可能です。
・温める、冷やす
温湿布で、関節の固まりとひりひりする感覚を緩和できます。急性の痛みや腫れには冷湿布を用いましょう。
・マッサージ
Deep‐tissue massaegeは、2010年のコンシューマーレポートオンライン読者から高い評価を得ました。半数が「とても効果があった」と言っています。
薬を使用する際の注意点
・イブプロフェンとナプロキセンは痛みと炎症を和らげてくれます。ただし、長期間服用すると、胃からの出血と高血圧を引き起こす危険性があります。使用するのは短期間に留めましょう。
・アセトアミノフェンも疼痛(とうつう)緩和に有効ですが、高用量だと肝臓にダメージを与えてしまいます。1日3000mg以下になるようにしてください。
※本記事は、徳田安春監修の下で、Consumer Reportsが作成した記事を翻訳し、一部を日本の読者向けに改稿したものです。
翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム(佐竹悠介)
監修:梶有貴、徳田安春
Consumer Reportsの記事:
Treating Osteoarthritis of the Knee-Popular supplements don’t work