・診療ガイドラインへの「Choosing Wisely」の導入に向けた研究
1)2023年8月14日~16日の3日間、Preventing Overdiagnosis 2023 International Conference(過剰診断防止国際会議2023)が開催されました。今年の担当は Danish College of General Practitioners で、コペンハーゲンにて対面のみで開催されたようです。
解説:毎年、欧米の都市や大学で持ち回り開催されているこの国際会議は、以下のように位置付けられています。
A forum for researchers, clinicians, policy makers, patients and the public to explore the issue of Overdiagnosis and find solutions. This event provides a platform to establish and advance the research agenda in overdiagnosis.
研究者、臨床家、政策決定者、患者、市民など、様々な参加者が想定されていますが、過剰診断のリサーチ振興に重点があるようです。
3日間で全体セッションが6、ワークショップが14、セミナーが16,抄録セッション(一般演題)が16,それと、リサ・シュワルツ記念講演。
全体セッションの6つのテーマを再録:
- Overdiagnosis and sustainability of healthcare for patients, clinicians, communities and the planet
- How does consumer testing and self-screening contribute to overdiagnosis
- Clinical solutions and decision making during consultation to mitigate overdiagnosis
- Overdefinition: pre-disease a driver for overdiagnosis and expanding disease definition
- Incentives, drivers and causes of overdiagnosis
- Communicating about overdiagnosis including the role of mainstream journalism & social media
まとめ
- 過剰診断と持続可能性:医療(患者・臨床家双方)、社会、地球(プラネット)環境にとって
- 消費者自身による検査や自己スクリーニングが、如何に過剰診断に繋がっているか
- 診療現場での臨床問題解決や意思決定に当たって過剰診断を回避すること
- 定義の拡大:過剰診断を促進する「前⁻疾患状態」と疾患定義の拡張
- 過剰診断のインセンティブ、促進因子、原因など
- 過剰診断についてのコミュニケーション:(主要ジャーナリズムとSNS を含む)
また、2日目の「抄録セッション(一般演題)」で、Aleksi Raudasoja 先生(CWフィンランド)が、「 Primary care physicians’ perspectives on low-value care and barriersto de-implementation: Survey in six high-income countries 」と題した口演をされたようですが、この研究には、梶有貴先生を中心に Choosing Wisely Japan も参画し、プライマリ・ケア連合学会会員を対象に、低価値医療やChoosing Wisely キャンペーンについての意識調査を実施しています。
これは、今回の国際カンファレンスに先立って公表されました。本文1頁弱の短いステートメントの中で、過剰診断に対する基本的な問題意識および現代的課題、私たちはどう行動すべきかといった事柄を明解に論じています。カンファレンスに参加している主な団体とリーダー、基本文献や最新の動向も紹介されていて、 Choosing Wisely Japan の活動にも大いに参考になりそうです。過剰な診療行為の根底にある「過剰診断」の問題について、日本の医療界も強い問題意識を持つべきだと感じています。
2023年5月に、米国ABIM財団の「Choosing Wisely 」ホームページが大幅に改訂され、従来、閲覧・ダウンロードが可能であった86学会(団体)からの総計570項目の「リスト」一覧表(PDF)にアクセスできなくなりました。今後は、それぞれの学会(団体)のホームページ上で検索可能と記載されていますが、皆様の利便性を考慮し、資料として掲載することとしました。自由に閲覧(参照)してください。(なお、商業目的の二次利用はお控えください。)
参考までに、Choosing Wisely Canada の「リスト」は、従来通り閲覧可能です。