医療における”賢明な選択”を目指して

2024年の年頭に当たって

2024年は、元旦に能登半島地震、2日に羽田空港での航空機の衝突炎上と、とても新しい年を祝う気持ちになれない出来事が続いています。海外に目を転じても、ロシアのウクライナ侵攻は戦線膠着と伝えられ、ガザの惨状も収まる気配が見えません。こうしている中でも、毎日、尊い生命が失われていることを想うと胸が痛みます。

昨年、地球全体の平均気温は、1850年以降の観測史上、最高記録を更新しました。気候変動や地球温暖化の課題が切迫する中で、各国で展開されている Choosing Wisely キャンペーンや過剰診断防止国際カンファレンスも、医療資源の有限性のみならず、人類社会そのものの持続可能性にまで目を向ける方向に向かっています。世界の出来事が私たちの生活に直結している今日、医療の現場でも、私たち医療職は、地域や国を問わずさまざまの環境下で生活している人々にとっての生存と健康にまで思いを馳せざるを得ません。また、より良い医療を求める市民も、自身の健康問題と切り離せない社会の危機的な状況について考えざるを得ないと言えるでしょう。

Choosing Wisely Japan も新型コロナ禍を体験する中で2023年度から幾つかの新しい企画に取り組んでいます。昨年4月から隔月で開始したオンラインレクチャーは、既に5回を数え、その要旨は「ニューズレター」に紹介されています。第6回目は、来たる2月3日(土曜日)午後2時から東京大学大学院医学系研究科教授の康永秀生先生に「ビッグデータから見えてくるわが国の医療ー持続可能性の観点から」と題してお話しいただきます。是非、聴講ください。

また、このオンラインレクチャーシリーズとは別に、昨年9月23日には、日本プライマリ・ケア連合学会の『秋季生涯教育セミナー』(オンライン)で「低価値医療とChoosing Wisely Japan – 持続可能な医療と社会のために」と題した約90分のセミナーを実施しました。セッションテーマに沿ってChoosing Wisely の国内外における歴史と現状、さらには展望について私が手短に紹介した後、群星沖縄臨床研修センターの徳田安春先生に「コロナ禍におけるChoosing Wisely」と題してヒドロキシクロロキン、イベルメクチン、ステロイドパルス療法、抗生物質を例にとってコロナ禍の下での薬剤投与について検証していただき、京都薬科大学の北澤京子氏には「Choosing Wiselyへの期待 ~医療を受ける立場から~」と題して過剰な期待が生み出す過剰医療や検査が感謝を生み出すメカニズムについて話していただきました。また、若手の代表として東京大学医学部附属病院精神神経科の古川由己先生に「市中肺炎への抗菌薬の至適治療期間:系統的レビューと期間反応メタ解析」と題して、抗菌薬の使用期間はもっと短くても良いのではないかとの問題提起を行っていただきました。81名の聴講のうち医師が 66名(うち、病院勤務44名、クリニック等 20名、その他 2名)、薬剤師 が15名でしたが、薬剤師の聴講が多かったことが、特に印象的でした。

(小泉俊三)

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