厚生労働省から、医療資源の適正使用に関連する資料が発表されています。2023年2月時点で公表済みの主な資料を紹介します。
2015年
保健医療2035(2015年6月、厚生労働省「保健医療2035」策定懇談会)
「保健医療2035提言書」では、2035年の保健医療が達成すべきビジョンとして、「リーン・ヘルスケア~保健医療の価値を高める~」、「ライフ・デザイン~主体的選択を社会で支える~」、「グローバル・ヘルス・リーダー~日本が世界の保健医療を牽引する~」の3つを掲げています。そのうちの1つである「リーン・ヘルスケア」を実現するための具体的アクションの例として、「世界各国で急速に広がっている「賢い選択(Choosing Wisely)」の取組み、すなわち、検査や治療の選択において必要性を的確に吟味し、無駄を控えるように推奨するなどの専門医学会等による自律的な取組みを進める」と、Choosing Wiselyが紹介されました。
2017年、2019年
抗微生物薬適正使用の手引き 第一版(2017年6月、厚生労働省健康局結核感染症課)
抗微生物薬適正使用の手引き 第二版(2019年12月、厚生労働省健康局結核感染症課)
抗菌薬の不適切な使用は、薬剤耐性菌の出現を招くことから世界的な課題となっています。「抗微生物薬適正使用の手引き」は、主として外来診療を行う医療従事者向けに、抗菌薬の具体的な使用法を示しています。たとえば成人の感冒(かぜ)に対しては「抗菌薬投与を行わないことを推奨する」と明記しました。
2018年、2019年、2021年
高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)(2018年5月、厚生労働省)
高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))(2019年6月、厚生労働省)
病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方(2021年3月、厚生労働省)
多剤服用の中でも害をなすものを特にポリファーマシーと呼び、特に高齢者のポリファーマシーへの対応が求められています。ポリファーマシーに至る典型例として、(1)新たな症状が加わるたびに新たな医療機関を受診すると、それぞれの医療機関で薬が処方され、結果的にポリファーマシーに至る場合と、(2)新たな症状が加わるたびに薬で対応すると、その薬の有害事象に別の薬が必要となり、次々に重なって、結果的にポリファーマシーに至る場合(処方カスケード)――の2つが指摘されました(総論編)。
2020年
「がん検診のあり方に関する検討会」における議論の中間整理(2020年3月、厚生労働省がん検診のあり方に関する検討会)
がん検診には利益(早期発見・早期治療による死亡率の減少、侵襲の軽度な治療、「異常なし」と判定されることによる安心感等)と同時に、不利益(偽陰性、偽陽性、過剰診断、偶発症等)が一定程度存在することから、対象者に対して利益だけでなく不利益も併せて説明することが重要であると指摘しました。ただし、不利益を説明する際は、がん検診の受診率低下を招かないよう、伝え方にも留意が必要と述べています。